東京工業大学 大学院情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 三好直人 研究室   

研究分野――応用確率論/確率モデル

 私たちのまわりには,ちょっと先の事でさえ正確には予測できないような現象がたくさんあります. そのような不確実性/不確定性を含む現象は,確率を用いることによって数学的に表現できるようになります. この研究室では,私たちのまわりに見られる不確定な変動を含む現象を,確率を用いてモデル化し,内在する数理的な構造や本質的な特性を探り出し,予想される結果について調べる,というような研究をしています. 特に,情報通信や計算機科学の分野に現れる確率的な現象に興味を持っています.
 以下に,最近の研究テーマの中から幾つか選んで紹介します. 個々のテーマは,基本的には,不確定変動を含むような問題を一つ特定し,それに対して確率モデルをつくり,そのモデルについて成り立つ性質を調べるといった要領で進めていきます. 数値計算やシミュレーションによって,予想される性質を先に確認したり,理論的に得られた事柄を後から検証することもあります.

空間点過程を用いた無線通信ネットワークのモデル化と解析

 皆さんが使っている携帯電話などの無線通信ネットワークでは,無線基地局や携帯端末などの無線ノードの位置関係が性能に大きく影響します. これは,信号の強さが距離とともに減衰するからというだけではなく,通信したい無線ノードからの信号が,通信相手ではない無線ノードから発信される信号 (干渉信号) に邪魔をされるからです. 無線ノードは規則正しく配置されている訳ではありませんので,無線ノードの配置を (2次元または3次元の) 空間上にランダムに点が配置された空間点過程を用いて表現し,そうしてつくった無線ネットワークの確率モデルを基に性能評価を行います. 以下の図は,解析によく用いられるポアソン点過程と呼ばれる点過程 (左) とジニブル点過程と呼ばれる点過程 (右) のサンプルです. ポアソン過程では各点が互いに独立に配置され,そのため点が密集しているところや大きな隙間の空いているところが見られます. ジニブル過程では点同士が互いに反発するように配置され,ランダムでありながら比較的バランスよく配置されていることが分かります.

Sample of Poisson process          Sample of Ginibre process

 学生・初学者向け参考文献

インターネットの通信品質測定

 インターネットでWWWページを見ようとして,いつもは一瞬で表示されるページが,そのときに限って十秒くらいかかってようやく表示された,といった経験はありませんか? これには,たまたまサーバが混んでいた,どこか途中のルータが混み合っていたなど様々な原因が考えられますが,直接インターネットの中を覗いて原因を調べることはできません. そこで,試験パケットを送るなどの方法によって,間接的にインターネットの内部の様子を推定する手法について研究します. この研究では,インターネットの中を行き交うパケットの流れを確率を用いてモデル化します.

キャッシュのページフォールト率の解析

 データベースなどでは,頻繁に使うファイルに短時間でアクセスできるように,それらのファイルを特別に保存しておくことがあり,この保存場所のことをキャッシュと呼びます. その際,どのファイルを保存するかなど,キャッシュをどのように更新するかが問題になります. 将来どのファイルが必要になるかが分からないので,これを確率を用いてモデル化します. そして特定のキャッシュ更新規則に対して,アクセスしたファイルがキャッシュに存在しない確率 (フォールト確率) を調べます. これによって,どんな更新規則が適しているか,キャッシュのサイズはどのくらいにすれば良いのかなどの問題に対するヒントを与えます.

待ち行列を用いたモデル化と解析

 待ち行列とは,銀行のATMやコンビニのレジなどで順番を待ってできる行列を指しますが,通信システムや生産システムの内部にも同じような待ち行列が形成されることなどから,古くから研究の対象にされてきました. 最近でも,例えばコールセンターの確率モデルとして,繋がり易さの評価や繋がってからオペレータに待たされる時間の評価などに用いられています.

 学生・初学者向け参考文献

 上に書いた以外の様々な確率モデルに対しても,純粋に理論的な興味から,または特定の問題への応用を意識して,色々な研究をしています.


学生に望むこと――自主独立

 学生の皆さんには,自分の興味の持てるテーマについて自由な発想で研究してくれることを望んでいます. そして,自分の研究テーマに対して,自ら進んで勉強し,どうすれば解決できるのか,そのままでは解けない場合は何を仮定すれば解けるようになるのか,元の目標通りではないけれど,その代わりにこんなことができる,といったことを考えてくれればと思っています.
Naoto Miyoshi

  東京工業大学
  大学院情報理工学研究科  数理・計算科学専攻

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